248人が本棚に入れています
本棚に追加
「なにそれ」
祥悟の唇がうっすらと開き、囁くような呟きが飛び出した。
「祥。今日の撮影を瑞希くんに」
「はぁぁぁ……」
祥悟は不機嫌そうな大きなため息で、こちらの言葉を遮って
「なんなのさ、その態度。場所塞いでるからどけろって言っただけでそういうのって、失礼なんじゃねーの?」
「祥、違うよ。これは」
「馬鹿じゃねーの? 誰が来るかわかんないとこでさ、いちゃついてる方が悪いよね」
「祥悟さん、違う、僕っ」
前に出ようとする瑞希の身体を押さえる。
祥悟は、瑞希と自分を嘲笑うように見比べて
「あのさ。盛るんなら他でやれば? それとも人に見られるスリルが堪んないわけ? だったら俺が、見ててやろうか?」
祥悟がきゅーっと口角をあげて微笑んだ。
その笑顔は、さっきの冷ややかな威嚇とは別の意味で……怖い。
「祥。やめてくれ。邪魔だったなら謝るよ。今日はね、瑞希くんが君の撮影現場を見学したいっていうから、連れてきたんだよ。今、君の控え室に」
「で? こんなとこで抱き合ってたのかよ」
祥悟はくすくす笑うと、後ろにいる瑞希に視線を向けた。
「智也。おまえが今、同棲してる子ってそいつ?」
「……っ。ど、同棲って」
「社長が話してたんだよね。人付き合いあんま好きじゃないおまえがさ、珍しく可愛い男の子と一緒に暮らしてるって」
智也は驚いて目を見開いた。
情報の出どころは社長なのか。
確かに、親戚の子を預かっていると一応報告してはいたが、祥悟がそれを知っているとは意外だった。
基本、祥悟は社長と反りが合わないし、他人のそういう話に関心を示す男ではない。
「あ……ああ、一緒に暮らしてるのは本当だよ。祥、前に会わせたけどね、この子は瑞希くんだ。俺の」
「智くんって……おまえのこと呼んでた奴だよね」
最初のコメントを投稿しよう!