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祖父の家で瑞希に会わせた時、祥悟は意外なくらい瑞希のことを気に入っている様子だった。
一緒に食事しながら、ひどくご機嫌な顔でじゃれついていたのだ。
「ああ、そうだね、瑞希くんは俺の従兄弟なんだ」
「……は?」
瑞希に突っかかろうとしていた祥悟が、意外そうな顔でこちらを見た。
「いとこ……?」
「うん。前にもそう紹介したつもりなんだけど……覚えてないかい?」
祥悟はきょとんと目を丸くして、瑞希に視線を向けると
「……そうだっけ? んなのいちいち覚えてねーし」
瑞希が智也の身体を押しのけるようにして前に出た。
「あ。じゃあ改めて自己紹介しますね。僕、智くんの従兄弟の常葉瑞希です」
そう言って瑞希がぺこりと頭をさげると、祥悟はちらっとこちらを見て首を竦めた。
「……従兄弟かよ。恋人じゃなくて?」
「恋人なわけないだろう 俺は……」
「可愛い男の子と同棲って聞いたからさ、やっぱおまえって、ゲイなのかと思ってたし」
俺はゲイじゃないからね。
そう言おうとして一瞬躊躇した。その隙間に、祥悟の言葉が滑り込んでくる。
「……」
「なーんだ、そっか。つっまんねーの。同棲してんだったらさ、いろいろ突っ込んでやろうと思ってたのに」
「してませんよ、同棲なんて。ちょっと事情があって、僕が智くんのとこに居候させてもらってるだけなんです」
にこにこしながら言う瑞希に、祥悟の態度が一気に軟化した。
逆立てた毛も剥き出しになりかけた爪も引っ込めて、ちょっと気怠げないつもの彼に戻っている。
「おまえ高校生だっけ? そっか。親戚の子、預かっているってことかよ。ふーん。ま、いいや。ところでさ、ここでいつまでも喋ってんのも変じゃん。控え室、行く?」
「はい。あ……でも、祥悟さん、トイレは?」
祥悟はひょいっと首を竦めて
「別に用足しに来たわけじゃねーし」
そう言うと、くるっと踵を返してさっさとドアに向かう。智也は瑞希と目を合わせて、首を傾げた。
……トイレしに来たわけじゃないって……。じゃあここにいったい何をしに……?
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