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ショックを受けている智也に気づかないのか、祥悟は包みを開けてマフィンを齧ると
「んー。まあ、付き合うっつーか、たまに会って遊んでるだけだけどな」
「あ、遊んでるって……君、あんなことがあったのに、懲りてないの? 彼女は」
「まあ、あれは俺も悪かったし? そんな悪いやつじゃねえもん、アリサ」
けろっとして、お菓子を頬張る祥悟に、智也は絶句した。
話し合いで解決した時点で、彼女とは距離を置いているのだと思っていた。まさかまだ、付き合いが続いていたなんて。しかも遊んでいるということは、祥悟は彼女と……そういう関係なのか。
「んー。このキャラメルとチョコのやつって、前はなかったよな? 今までで1番美味いかも。これってピーカンナッツじゃん。俺、これ大好き」
無邪気に新作のマフィンに目を輝かせている祥悟が信じられない。
あの娘が……悪いやつじゃない?
あんなことがあったのに?
あんな嘘をついてまで祥悟を独占しようとした、あの娘の執着心は普通じゃない。
自分ならば、もう絶対に関わらないようにするだろう。それなのに……
「なあ、智也、今度さ、新しくオープンした……」
「君は、バカなのか?!」
バンっとテーブルを叩いて立ち上がった智也に、祥悟は驚きに目を見開いた。
「どうしてあの娘とそんなっ。信じられないよ。君は本当に警戒心がなさすぎる!」
呆気に取られたようにぽかんと口を開けた祥悟が、すぐに我に返って眉をひそめた。
「……バカって、なんだよ?」
「バカはバカだよ。あの娘は危険だ。すぐに距離を置くべきだ」
言いながら、胸のムカつきが増してゆく。
祥悟の顔が、ますます険しくなったが、そんなこと構っていられない。
「おまえさ、それ、言い過ぎ」
「言い過ぎじゃない。どうして分からないんだ? あの娘はひとつ間違えたらモデルとして致命的になるようなスキャンダルに、君を巻き込もうとしたんだよ? どうして君がまだ彼女と関わりを持とうとするのか、俺にはまったく理解出来ない」
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