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智也は、はあっとため息をつくと、ハンドルを離して瑞希の方に向き直った。
「それは……どういうことだい? 君と無理心中みたいなことしようとしたのは、亨くんの方だろう?」
瑞希はちらっとこちらを見て目を伏せた。
「……僕が……亨くんを煽ったの。そんなに好きなら一緒に死ねるか?って」
「……っ」
智也は息をのんで、言葉を失った。
「売り言葉に買い言葉、だったんだと思う。亨くん、僕が裏切ったって思い込んでたから……すごく落ち込んでて……」
もしそれが本当ならば、瑞希から聞いていた話はだいぶ意味合いが違ってくる。
「でもっ、亨くん、僕を本当に殺そうなんて、きっと思ってなかった。首を締めてる手……すごい震えてたから。僕、僕は、こ、怖くなって、逃げ出したんだ。ちゃんと、冷静に話し合うべきだったのに、ぼ、僕は」
相手は瑞希よりかなりガタイのいい大学生だと聞いている。もしそんな状況になったら、まだ高校生の瑞希が、恐怖で怯えてしまっても不思議はない。
だが……その状況が本当ならば、亨という青年はどれほど苦しかっただろう。もしかしたら今も、罪の意識に苦しみ続けているかもしれない。
「瑞希くん。お母さんには、首を絞められたとは言わなかったんだよね? ただ、彼のアパートに連れて行かれて、連絡なしでずっと泊まっていたって言っただけだよね?」
「……ぅん……」
瑞希は泣いていた。俯いている彼の握り締めた手に、ぽたぽたと透明な雫がいくつも落ちていく。
「君はまだ、俺にキチンと話してくれてないね?瑞希くん。亨くんと君のことを。それじゃあ俺は、君を助けてあげられないよ」
マンションに戻って、とりあえず順番に風呂に入り、先に出た智也は瑞希の為にホットミルクをいれてやった。
車の中で1度中断していた話を、腰を落ち着けてゆっくり聞いてみる。
瑞希が話してくれた亨との経緯は、最初に聞いた内容と大筋では違いがなかった。ただ、車で打ち明けてくれた肝心の部分だけが、すっぽり抜けていたのだ。
「君が浮気しているっていうのは、亨くんの誤解だったのかな?」
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