第1章 舞い降りた君

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「ふーん……結構いい感じんとこ、住んでんだね」 祥悟は興味津々で、玄関から中に入ると、物怖じしない様子でキョロキョロと辺りを見回しつつ、智也より先に中に入っていく。 ……うわ。どーしてこうなったんだよ? 智也はハラハラしながら祥悟の後に続いた。 喫茶室で場所を変えようと祥悟に言われて、さて、どこに行こうかと智也は首を捻っていた。 祥悟はまだ未成年だから、飲みに連れて行くわけにはいかない。どこか落ち着いた店に食事に連れていくのが妥当な線だが、2人連れ立って歩けばどこに行っても目立つだろう。 ……個室のある店ってどこだったかな。……心当たりあるけど、この時間で予約出来たか?? 祥悟はパフェをぺろりと平らげると、悩んでいる智也を無視して立ち上がった。 「行こ、智也。時間勿体ないじゃん」 急かされて智也も慌てて立ち上がった。伝票を手に祥悟の後を追い、会計を済ませながら、まだどこに行くかと悩んでいると 「俺、上で化粧落として着替えてくる。……あ。智也。ご馳走さま。すっげー美味しかった」 祥悟はにこっと笑うと、さっさと喫茶室を出て、エレベーターのボタンを押した。 一緒に控え室前まで行って、廊下で祥悟を待つ間、智也はスケジュール帳を取り出して、2、3心当たりの店の電話番号を探した。せっかくの記念すべき初デートなのだ。祥悟にがっかりされないような、気の利いた店を見つけて、スマートにエスコートしてあげないと。……祥悟の方は、デートだなんて絶対に思っていないだろうけど……。 焦る智也の前に、予想外の早さで再び祥悟が現れた。 濃い目の化粧は綺麗さっぱり落として、完全なスッピンだ。上の白いブラウスはそのままで、下はダメージジーンズに履き替えていた。丈の短いジャケットを羽織って帽子を被った祥悟の姿は、さっきよりも歳相応に見えるが、相変わらず眩しいくらいに綺麗で、智也はまたドキドキして見惚れてしまった。 「お待たせ。どこ行くか決まった?」 祥悟は無邪気に智也の手帳を覗き込んでくる。 ……うわ。だから、そんなに引っ付くなって。というか、マズイな。どこにするかまだ……。
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