見えない糸

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あの時こうすればよかった、なんていうのは結果論だ。渦中にいるその時に冷静に考えて行動出来るものならば、後悔という言葉は存在しない。 2人とも精一杯だったのだ。それは本当にどちらが悪いとか悪くないの問題じゃない。 智也は、ボロボロ零れ落ちる瑞希の涙をハンカチで拭いながら 「ねえ、瑞希くん。君のその気持ち、亨くんにはちゃんと伝わってるのかな?」 瑞希は智也の腕に顔を押し付けたまま、無言で首を振った。 「うん。きっと彼、誤解しているよね。君に騙された、裏切られた、そう思っているのかもしれない。だからおばさんに、君との思い出の写真を渡してしまったんだろうな」 ひぃぃっく、と瑞希がしゃくりあげる。 智也は瑞希の肩を優しくぽんぽんっと叩いた。 「さっきは事情が分からなくて反対してしまったけどね、もし彼が君の真意を確かめたくてストーカーみたいな状況になっているのなら、君は彼と話をした方がいいかもしれないな」 瑞希が震えながら顔をあげた。智也は微笑んで 「彼の気持ちが分からないから、一対一で会うのはダメだよ。だから、俺が一緒に行く」 「っ。と、智くん、僕……っ」 「君が彼のことを好きで、せめて誤解だけでも解きたいって思っているならね。どうだい?」 瑞希はくしゃっと顔を歪めた。 「ぼ、僕、あ、会いたい。亨、くんに、会って、話、したい……っでも、智くんにそんな」 「迷惑じゃないよ。君は、俺に、とても大切なことを教えてくれたからね。だから俺は、君の力になりたいんだ」 瑞希の涙に濡れた瞳が大きくなる。智也は少し苦笑して 「逃げていてもダメだ。想いは言葉にしないと伝わらない。君が教えてくれたことだよ。俺はどうにも上手く、それを行動に移せないでいるけどね」 「智くん……」 「俺のことより、まず君だ。俺が一緒についていくよ。亨くんに会いに……行ってみるかい?」 瑞希の目からまた涙が溢れて零れ落ちた。 「……うん……僕、亨くんに、会いたい」
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