第1章 舞い降りた君

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智也はリビングに戻ると、テーブルの上の雑誌をパラパラ捲っている祥悟に 「本当に何もないんだ。ちょっとコンビニで調達してくる。祥悟くん、飲み物は何がいい?」 祥悟はひょいっと顔をあげ、首を傾げると 「別になんも要らないし。喉渇いたら水でいいけど?」 「でも……甘い物とか欲しいよね?」 祥悟はぱちぱちと瞬きをして 「プリンとチョコ」 すかさず即答する祥悟に、智也は微笑んだ。 「わかった。飲み物は炭酸かい?」 祥悟は眉を顰めて 「ジュースは好きじゃない。紅茶がいいな。無糖のやつ」 「わかった。すぐ近所だから。テレビでも観て待ってて」 智也は祥悟をそのまま残し、家の鍵と財布だけ持って部屋を出た。 祥悟が喜ぶかもしれないと、あれもこれも、ついいろいろ買い込んでしまった。智也はコンビニ袋を2つ抱えて、玄関の鍵を開けて中に入る。 リビングのドアを開け、買い物袋をダイニングテーブルに置くと、祥悟のいるソファーに向かって歩きながら 「紅茶、これでよか……」 話しかけた智也の言葉が、途中で止まる。 ……うわ……。 祥悟はさっきと同じソファーに居た。でも座ったまま、うたた寝しているのだ。 大きなクッションを抱き締めて、背もたれから肘掛けにちょっとずり落ちたような体勢で、すーすーと寝息をたてている。 さっき控え室の奥で丸まって眠る、祥悟の無邪気な寝顔を見たばかりだ。でも、今の彼はスッピンで、あの時より更にあどけなく見えた。 ……なんだろ……この子、本当に天使なんじゃないのか? 智也はじわじわと感動しながら、そーっと祥悟に歩み寄ると、その無邪気な寝顔をじっと見つめた。 10代の少年特有の透き通るような肌。流し目をすると艶っぽい大人びた目は、今は閉じられていて、長い睫毛が微かに揺れている。ほんのり紅潮した頬に、うっすらと開いた唇。化粧なんかしなくても、見惚れるほど美しい。
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