第1章 舞い降りた君

29/38
前へ
/261ページ
次へ
「祥悟くんはいつだい?」 「質問してんの、俺」 好奇心にきらめく瞳で、じーっと見つめられて、智也は早々に白旗をあげた。 「……結構遅いよ。19」 祥悟は片眉をあげた。 「へえ。相手、誰?うちの事務所の女?」 「言わないよ、そんなこと」 「今も付き合ってんの?その娘と」 「それも内緒」 祥悟はぷーっと頬をふくらませ 「ちぇー。いいじゃん、そんぐらい教えてくれたってさ」 「どうしてそんなの聞きたがるの?何か悩み事かい?」 祥悟はアイスティーのグラスに手を伸ばして、ごくごく飲むと 「別に、悩み事っつーか。んー……あのさ、誰にも言わねえ?」 祥悟は急に智也ににじり寄ってきて、下からすくうように覗き込んできた。智也は内心どきっとしたが、必死に無表情を保ち 「ああ。誰にも言わないよ」 「ん。じゃあ智也のこと信用する。あのさ、こないだ、ある人に、付き合ってって言われたんだよね」 ……え……。 「いろいろ教えてあげるから、私と寝てみない?ってさ」 ……え……? 「寝るのは別に構わないんだけどね、相手、歳上だし、俺まだ経験浅いしさ。エッチしてみて下手くそ~とか思われたら、癪に障るじゃん?」 ……えーーー? 「智也、さっきのキス、何気にすげえ上手かったし。女歓ばすテクとか、知ってんのかな?ってさ」 智也は絶句して、まじまじと祥悟を見つめた。 「ちょっ、ちょっとストップ。祥悟くん、君、今いくつだっけ?」 祥悟は一瞬ぽかんとしてから、怪訝そうに眉を顰め 「え。こないだ16になったけど?」 ……そうだよな。俺より5歳下なんだから、当然だよな。 「その、君にそういうお誘いしてきてるのって、誰?うちの事務所の人?」 祥悟はにやっと笑って 「それは言えない。内緒」 智也は、はぁ~っとため息をつくと 「あのね、祥悟くん。そういう悪いお誘いは、きっぱり断ろうか。相手は多分、だいぶ歳上だろう? 君みたいな子どもにちょっかい出すなんて、ちょっとありえないよ」 祥悟は目を大きく見開くと、しげしげと智也の目を見つめて 「うわぁ……智也ってやっぱさ、お堅いんだね。なんかすっげー期待裏切らない感じ」
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!

247人が本棚に入れています
本棚に追加