第1章 舞い降りた君

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心の中で、何度も言い方を変えて「祥」と呟いてみる。じわじわと嬉しくなってきて、頬のにやけが止まらなくなる。 ……あーあ。俺、終わってるよな。呼び捨てでいいって言われたくらいで、喜び過ぎだろ。 でも……祥……かぁ……。 智也の知る限りでは、祥悟のことを「祥」と呼んでいるのは、姉の里沙だけだ。ということは、祥悟は、自分のことを、身内のように親しく感じてくれているってことなんだろうか。 だとしたら、すごく嬉しい。 「……何、にやにやしてんの?それ、もう食わねえのかよ?」 はっとして顔をあげると、祥悟が怪訝な顔で、自分とパスタを見比べている。智也はゆるみかけた頬を引き締めて 「あ、ああ。うん、なんか胸いっぱいだ。よかったら、これも食べて?」 「ふーん……。じゃ、遠慮なくもらうけど」 祥悟は差し出された皿を受け取ると、もぐもぐと食べ始めた。 ……それにしてもよく食べるな。昼間のパフェといい、カロリー制限とかしないのかな。 モデル業だから当然、我々は自分の容姿が商品だ。 それほど太りやすい体質ではないが、智也も食事にはある程度気をつけている。肌の調子や傷なども、自己管理は怠らない。 ……太れない体質なのかな。そういえば喫茶室で見せてもらったお腹周り、ちょっとどきっとするくらい細かったな。 「明日、午後からなら、今夜はここに泊まっていくかい?君の家ってたしか○○だろう?結構こっち出てくるのキツイよね」 ……なーんて。さりげなく言ってみたりして。
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