第2章 波にも磯にもつかぬ恋

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第2章 波にも磯にもつかぬ恋

事務所の廊下で偶然、里沙やマネージャーと一緒にいる祥悟と、鉢合わせになった。 智也はちょっと動揺して、咄嗟にどんな顔をすればいいのかと戸惑ったが、祥悟はにやっと不敵な笑みを浮かべて首を竦めてみせた。 智也は内心の動揺を押さえ込み、ポーカーフェイスで微笑み返して 「これから、仕事かい?」 「そ。打ち合わせ終わったら移動。智也は?」 「俺は撮影終わって、これから帰るところだよ」 祥悟はぷーっと頬をふくらませ、智也に近づいてきた。 「いいなぁ。もうあがりかよ。俺も家でのんびりしてえし」 「これから移動ってことは、今夜は泊まり?」 「うん。撮影、沖縄だからさ。あ、智也、明後日っておまえ、予定ある?」 智也はどきっとして、慌てて自分のスケジュールを思い浮かべた。その日は都内で午後2時に紳士服ブランドのイベント営業がある。遅くとも午後6時にはフリーになれるはずだ。 「18時以降なら、空いてるけど」 祥悟は、ふんっと鼻を鳴らし 「俺、夕方こっち戻ってくんの。どっか飯が美味いとこ、連れてってよ」 思いがけない祥悟の言葉に、胸が高鳴った。でも顔には出さないようにぐっと堪えて 「いいよ。こっち着く時間、分かったら携帯に連絡して。 ……あ、祥、何が食べたい?」 にっと笑って里沙の方へと戻っていく祥悟に、智也は急いで問いかけた。祥悟は立ち止まり 「智也に任せる。あ、出来ればあっさりしたやつがいいかも」 マネージャーの飯倉と里沙が、ちょっと不思議そうな顔でこちらを見ている。智也は何でもないような顔で微笑んで 「分かった」 返事をすると、くるっと3人に背を向けた。 ぎくしゃくしそうな足取りで、そのまま洗面所に入ると、知らないうちに詰めていた息を、はぁ~っと吐き出した。 「明後日か……」 急いでスケジュール帳を鞄から取り出して、改めて確認してみる。 「大丈夫だ。間違いない」 祥悟からの食事の誘いだ。 嬉しくて思わず、頬が緩む。 ……店はどうしよう。あっさりしたものって和食がいいかな。何処か落ち着いて食べられる個室がある店がいいよな。
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