第1章 舞い降りた君

4/38
前へ
/261ページ
次へ
「あ、智也。ちょっと匿ってくんない?」 いきなり控え室のドアが開き、白い塊が飛び込んできた。 智也は驚いてまじまじと見つめた。飛び込んできたのは、真っ白な服を身につけた祥悟だった。 「なに?どうしたの?」 祥悟は口に指を当てて、しーっとすると、内側からドアに鍵をかけて、智也に駆け寄ってくる。 「マネージャー来たら、いないって言ってよ」 椅子に座ったまま振り返り、唖然としている智也に、祥悟はにかっと笑ってかがみ込み 「あ、そだ。先にお礼しとく」 そう言って、智也に覆い被さると、いきなり唇を奪う。 ……?! 一瞬、何が起きたのか分からず、智也は驚きに目を見開いたまま固まった。 祥悟は事務所に来た頃からスキンシップが多めで、抱きつかれたり頬にキスされたことはあるが、唇を奪われたのは初めてだった。 見た目はどちらかというと薄くて肉感的には見えない彼の唇は、触れてみると意外に柔らかくてふっくらしていた。 祥悟はちゅっと触れるだけのキスの後、いったん唇を離して 「したことねえの?キス。目は瞑るもんだけど?」 そう言って首を傾げる祥悟の艶やかな瞳が、揶揄いの色を滲ませている。驚きに目を見張ったまま、咄嗟に目を瞑ることも出来なかった自分を、笑っているのだと気づき、智也はむっとした。 ……5つも歳下のくせに、生意気なんだよ。
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!

247人が本棚に入れています
本棚に追加