第2章 波にも磯にもつかぬ恋

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自分から言い出しておいて、罪悪感がもたげてきて、智也は微妙に目を逸らしていた。 「え、まじ?教えてくれんの?」 ……ああ。この素直な反応が……可愛い。……心が痛むけど。 「うん。なんだったら、実地で教えるよ」 「へ?実地って……?」 「うん。実地」 祥悟は不思議そうに首を傾げ 「……なんかよく分かんねぇけど……じゃ、教えてよ」 智也はごくりと唾を飲み込むと 「いいよ。じゃ、デザート食べたら移動しようか」 目は逸らしたままで微笑んだ。 「なぁ、智也。ここって……」 「うん?」 祥悟は建物を見上げ、入り口を興味深げにしげしげと見てから、智也を睨みつけた。 「……ラブホじゃん」 「そうだね、でもいかにもって感じじゃないんだ。シティホテルに近いかな。出来たばかりだから部屋も綺麗だしね」 祥悟はもう1度、ホテルの入り口に目をやり 「でも、休憩Timeって書いてある」 「そうだね。あ、そうか。泊まりがいいなら、別に休憩じゃなくても……」 「ばーか。そういうこと、言ってんじゃねーし。俺、外泊禁止だって言ったじゃん」 意外にも、妙に尻込みしている祥悟に、智也はにこっと笑って 「……もしかして、祥。こういうとこに来るの、初めてかい??」 「は?まさか。初めてじゃねーし」 祥悟はツンっとそっぽを向いた。 「そうか。じゃあ、入るよ」 智也がそう言って歩き出すと、祥悟は慌てて振り返り 「ちょっ、待てってば。そうじゃなくてさ、なんで俺が、おまえとラブホ、入んなきゃいけないんだよ」 智也はすっとぼけて、不思議そうに首を傾げた。 「え?……だって。祥は俺にいろいろ教えて欲しいんだよね? でも俺のマンションは嫌なんだろう? だったらこういうところに入るしかないよね」 智也の返事が意外だったのか、祥悟はぱちぱちと瞬きした。 その表情がすごく素直で……愛らしい。
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