第2章 波にも磯にもつかぬ恋

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惟杏さんは素敵な女性だ。 あんなことがあった後も、仕事では普通に接してくれているし、2度目のお誘いを断っても、何もなかったような態度でいてくれている。もしかしたら、周りにおかしな噂が流れるかも??と覚悟していたが、2年経った今もそんな様子はない。口の固い優しい女性だと思う。 でも、祥悟が惟杏さんとそういう関係になるのは、正直、嫌だった。キスだけだったと聞かされて、泣きたくなるほどホッとした。 自分は自覚している以上に、祥悟を好きになり過ぎているらしい。 「なあなあ、智也。それで、何教えてくれんのさ?」 部屋の探検に満足した祥悟が、無邪気に近寄ってくる。智也は気持ちを切り替えて、祥悟ににこっと笑いかけると 「うん、そうだね。祥は何を教わりたい?」 「んなの、俺に聞かれても分かるわけねえじゃん。智也が教えたいこと、教えてよ」 ……うわ。それはまた……無防備だな。そんなに警戒心なくて、大丈夫?? 好きにしていいって言ってるのと同じなんだけど。 智也は内心ドキドキしながら立ち上がると 「じゃあ、まずはシャワーの浴び方、かな」 「へ?シャワーぐらい1人で浴びれるじゃん」 「1人じゃないよ。彼女と一緒に浴びる場合」 祥悟は眉を顰めて、智也をじ……っと睨み 「おまえさ、やっぱゲイだよな? 上手いこと言って、俺のことヤルつもりじゃねーの?」 ……あ。少し警戒した?でも大丈夫。そんなことはしないよ。 智也は穏やかに微笑んで 「俺が君に教えるのは、あくまで女の子への愛撫の仕方だよ。でも……怖いなら止めておくかい?」 「はぁ?だから、誰が怖いって言ってんだよ。じゃあ、風呂場な」 祥悟はぷりぷりしながら、さっさと浴室に向かった。 ……可愛いよな。プライドつつくとすぐにムキになるし。ちょっと……危なっかしいけど。 智也は苦笑しながら後に続いた。
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