第2章 波にも磯にもつかぬ恋

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何度かそうやって浅いキスを繰り返すと、薄く開いた祥悟の唇から、ふぅっと吐息が漏れた。 智也は祥悟の華奢な身体を抱き上げて、洗面台の上に腰かけさせる。狭い台の上で不安定な体勢になったせいか、祥悟は智也の腕にぎゅっとしがみついてきた。 「……キスは感じる?」 耳に唇を寄せて囁くと、祥悟はん……っと呻いて 「わ……っかんね、それ、擽ってぇってば」 「ふうん。……じゃあここは?」 柔らかい耳朶をぺろっと舐めて唇ではみはみすると、祥悟はんくっと小さく呻いて、もじもじと身を捩った。 「敏感だね、祥。ここ、感じるんでしょ」 わざと息を吹きかけながら、耳朶に歯をたてて甘噛みする。 祥悟の吐く息が甘さを増した。 そのまま、首筋へと舌を滑らせ、感じやすい場所を探る。祥悟は微かに喘ぎながら、智也の頭をかき抱いた。 首筋から鎖骨の窪みの辺りまで、舌先を滑らせていく。 真ん中の窪み辺りにあるファスナーのスライダーを口に咥えて、ゆっくりとおろしていった。 黒いレザーの隙間から、徐々に現れる滑らかな白い肌のコントラストが妙に艶かしい。体臭混じりの淡いコロンの香りが、智也の鼻先を擽った。 ……わ。なんだろ、これ。ちょっと……クるよな。 思いつきで口でファスナーを下ろしてみたけれど、なんだかすごく背徳的な感じがする。 半分以上下げて、肌蹴た白い胸に小さな尖りが見えた瞬間、どきっとした。 それは間違いなく少年の胸で、女の子のような丸みも膨らみもない。それなのに、ぷつんと飛び出た小さな粒が、淡いピンク色をしていて、ちょっとくらっとくる位、いやらしく見えた。 智也は咥えていたスライダーを離して、じ……っとその尖りを見つめた。男の乳首なんか自分ので見慣れているはずなのに、祥悟のそれは全然、違うものに見える。
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