第2章 波にも磯にもつかぬ恋

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いつの間にか目を開けていた祥悟に、きつい眼差しで睨みつけられた。 智也は苦笑すると 「ごめん。君があんまり綺麗だから、ちょっと見蕩れてた」 祥悟ははっとしたように目を見張り、ぷいっとそっぽを向いた。 「嘘つけ。すっげー貧相だろ?俺の身体。嫌いなんだよね。女みたいでさ」 「いや。痩せてるけど、綺麗な骨格してるよ。まだまだ君は成長盛りだからね。もう少し大人になれば、もっと筋肉もつく」 祥悟はふんっと鼻を鳴らした。 「それよりさ、服、脱がせるだけで、どんだけかかってんだよ。シャワー浴びんじゃねーの??」 愛撫を中断されて余裕が出てきたのか、憎まれ口が少し戻ってきた。 智也はふふっと笑うと 「そうだね。このペースだと、いろいろ教えてる時間、なくなっちゃうかな」 祥悟の脇に手を入れて抱きかかえ、床におろしてやった。 洗面台の狭いスペースに座る不安定な体勢から解放されて、祥悟はほっとしたように、小さくため息をついた。浮かべる表情にも、さっきまでの少し戸惑ったような頼りなさは消えて、いつもの不遜な雰囲気を取り戻している。 「で? 次はどうすんのさ」 「うん。シャワー浴びるからね。服、全部脱ごうか?」 智也はそう言って、祥悟の中途半端に腕に引っかかったシャツの袖を抜いてやる。ほっそりとした上半身が全て剥き出しになった。 「マジで一緒に、シャワー浴びるのかよ?」 「嫌かい?だったら別々でもいいけど。ただ、それだといろいろ教えられないよ」 祥悟は智也の顔をじと……っと見上げて 「智也ってさ、女抱く時はいつも、さっきみたいにしてんの?エロいことしながら服、脱がせたり?」 ……いつもっていうほど、女抱いたことないんだけどね。っていうか普通は服、こんな風に脱がせたりしないのかな。 「うーん。どうだろ。相手にもよるかな? でも非日常なことすると、ちょっと興奮したりしない?」 祥悟はきょとんと目を丸くして 「非日常なこと……?ふーん」 「鏡の前で少しずつ服脱がせたりって、ちょっと恥ずかしくて変な気分になったりするよね? もちろん、相手がそういうの、本気で嫌がってたら、逆効果だけど」 祥悟はちらっと鏡を見て 「……わかった。じゃ、下も脱ぐのな?」 ……いや。それって物分りよすぎだよ、祥。もう少し抵抗した方がいいと思うけど。
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