第2章 波にも磯にもつかぬ恋

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ボディソープのボトルを掴んで、中身を手に出すと、意を決して祥悟の方を向いた。祥悟は智也のすることを黙って見つめていたが、不思議そうに首を傾げ 「先に身体、濡らさねえの?」 ……! そうだった。先にシャワーを…… まごまごしている智也の横で、祥悟がひょいっと手を伸ばすと、シャワーのお湯を出す為に栓を捻った。 「うわっ!」 頭上からいきなり冷たい水が降り注ぐ。智也はドキンっとして、ちょっと情けない声をあげてしまった。 「…………」 祥悟はじと……っと智也の顔を見上げて 「おまえさ、ひょっとしてこういうの、慣れてねえだろ?」 ……あ。バレた。 智也は、濡れて顔に落ちてきた髪の毛をかきあげながら 「そんなこと、ないよ」 「ふーん……?」 祥悟は鼻を鳴らすと、ずいっと智也に歩み寄り 「智也。緊張してる?」 伸び上がって、微妙に目を逸らしている智也に自分の顔を近づけて、に~っと笑った。 「……っ」 いつの間にか、形勢が逆転している。これは……マズい。 「さっきからさ、なんで目、合わせねえの?」 悪戯っぽい表情で顔を覗き込んでくる祥悟に、智也は内心の動揺を押し隠して向き直った。 「身体見られるの、平気かい?」 「別に?女じゃねーもん、俺」 「触られるのも、大丈夫?」 祥悟はくすくす笑って 「さんざん触っといて、今更、何言ってんのさ」 シャワーのお湯が上から降り注ぎ、祥悟の柔らかい髪の毛を濡らしている。濡れた髪の毛は祥悟の顔にへばりつき、毛先だけがくるっと跳ねていた。 ……なんて……綺麗なんだろう。 小顔が強調された祥悟は、やはりため息が出るほど愛らしい。生意気に笑う表情も、可愛くて仕方ない。 智也はせつないくらいの情動に突き動かされて、ボディソープで泡立った手を伸ばし、祥悟の身体をぐいっと抱き寄せた。
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