第2章 波にも磯にもつかぬ恋

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後始末をして、トイレから出る。部屋に祥悟はまだ戻っていない。智也はほっとして脱衣場に行くと、さっき脱ぎ捨てた服を素早く身につけた。 鏡を覗き込んで、泣いてしまった目元の名残りを、急いで顔を洗って消していく。 浴室からは、何やら楽しそうな祥悟の鼻歌が微かに聴こえてきた。思わず、頬がゆるむ。 部屋に戻って時計を確認すると、チェックインしてからもう1時間以上経過していた。 休憩Timeは2時間で15分毎に延長も可能だ。でも、祥悟は外泊禁止で門限があると言っていた。2時間で20時を少し過ぎるから、延長はしない方がいいだろう。 ……祥が風呂から出たら、ソファーに座って少し話して……時間になったら家に車で送っていくか。 そんなことを考えていたら、ドアが勢いよく開いた。 腰にタオルを巻いた祥悟が、濡れた髪をタオルでゴシゴシしながら、こちらに歩いてくる。 祥悟は、ソファーに座る智也を濡れた髪の毛越しにじっと見おろして 「は?おまえ、なんで服、着てんのさ」 「え?」 「え? じゃねーし。続き、しねえのかよ?」 「……続き、……って」 祥悟は垂れてくる前髪をぐいっとかきあげて、不機嫌そうに智也を睨みつけ 「とぼけてんなよ。おまえ、まずは服脱がせて、一緒にシャワー浴びるとこから教えるって言ったじゃん。また服着てどーすんだよ?」 ……え。そ……そうなんだ?まだ続き……するの? 「あ……でも、時間あんまり、ないよ。今19:30過ぎてるし。祥、門限あるって……」 「今日は橘のおっさん、神戸に出張だから帰って来ねえもん。里沙にはお前ん家行くって言ってあるからさ。このまま朝まででも、俺は全然平気だけど?」 ……っ……。えーーー?!
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