第2章 波にも磯にもつかぬ恋

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あの小さな紅い唇。それが自分のそこに近づいて……そして…… ……っ。 想像しただけで、心臓がドキンっと跳ねた。いや、跳ねたのは心臓だけじゃないけれど。 智也はゴクリと唾を飲み込むと 「祥……君、何……言ってるの?そんなこと、だめだよ」 上擦った智也の声に、祥悟は不思議そうに首を傾げ 「なんでさ?俺が感じるんなら、おまえだっておんなじだろ?」 「いや、でも……っ」 祥悟は智也の手をぐいっと引っ張って、もう1度ベッドに座らせると 「俺、やってみるからさ、智也、どう感じるか教えて?」 嬉々として智也の身体にのしかかりながら、シーツに押し倒してくる。 「や。祥、待って」 祥悟は智也の上に馬乗りになると、着込んだシャツの胸元のボタンを外し始めた。 ……いやいや、ちょっと待って。これ、どんなシチュエーション? 自分の方が、押し倒されて服を脱がされてる。祥悟は目を輝かせて、ものすごーく楽しそうだけど……。 一応、止めさせようともがいてはみるが、びっくりし過ぎて、呆然としていて抵抗しきれない。祥悟は邪魔しようとする智也の手をうるさげに払い除けながら、ボタンを次々外していった。 「ふーん……。風呂場でも思ったけどさ、智也って脱ぐと、結構いい身体してんのな。ジム行ってんだっけ? この辺の筋肉がさ、すげえ格好いい」 祥悟は若干悔しそうな顔で、肌蹴たシャツの間から剥き出しになった智也の胸を、細い指ですーっと撫でた。 ……っっ。 やばい。一瞬ゾクッとした。 邪な妄想をしてしまったせいか、身体が過敏な反応をしている。慌てて祥悟の手を引き剥がそうとすると、今度は首筋にいきなり顔を埋めてきた。 「……っ」 祥悟のふあふあの髪が、顔にかかって擽ったい。……じゃなくて、首筋に生暖かい息がかかり、更にチリっと走る痛み。
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