第2章 波にも磯にもつかぬ恋

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ようやく形勢逆転だ。 智也は祥悟が我に返る暇を与えず、低い声で囁くと、祥悟の首筋に顔を埋めた。 両手首を掴んでシーツに縫いつけ、微かに甘い香りのする祥悟の首に、唇をそっと落とす。そのままつつーっと肌の上を滑らせ、舌をちろっと出して、浮き出た筋に沿って、なぞるように舐めていく。 「……っん……っぅ……」 時折揶揄うように止まって唇で軽く吸い、またつーっと舌を滑らせてみる。祥悟はその度にぴくぴくと胸を波打たせ、シーツにもじもじと足を擦りつけていた。 声を出すまいと堪えているが、どうやら感じているみたいだ。 ……ふふ。敏感だな。 押し倒されて、危うく立場が逆転しかけたが、華奢な祥悟を全身で組み伏せば、そう簡単に逆転は出来ない。 さっき首筋に吸いつかれて、まずい所がまた反応しかけた。本当にこの魅惑的な仔猫は、人を煽る天才だ。 「どうだい? 祥。感じるだろう?」 「ん……っぅ……わか……ったから、手、離せよ」 「乳首じゃなくても、君、感じやすいね」 揶揄うような言葉に、祥悟はちぇっと舌打ちして 「もういい。智也のばか。重いから、どけよ」 智也は少し身体をずらしてやった。 「怒った?」 「怒ってねーし。でもなんかムカつく」 「どうして?」 「だってさ。俺ばっか感じさせられて、智也は平然としてんじゃん?俺また勃ってんのに、おまえは何ともねーのかよ?」 ……うーん……。何ともなくは、ないんだけどね。 風呂の後、祥悟に悟られないように抜いたのに、祥悟の意外な行動に煽られて、またすっかりその気になっている己の股間がなんとも情けない。 「いや。何ともなくはないよ」 苦笑する智也に、祥悟はますます不貞腐れて 「……その余裕ある感じが、めっちゃ、ムカつく」 「じゃあ、俺が勃ってた方が、いいの? 祥は。この状況で俺がその気のある人間なら、君、貞操の危機だよね?」 智也がそう言って覆い被さって顔を覗き込むと、祥悟は一瞬目を見張り、片眉をくいっとあげて 「突っ込まれんのは、やだ。でもおまえ、勃ってんの、見てみたいし?」 ……この、負けず嫌いめ。
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