第3章.甘美な墓穴のその先に

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「おまえっ。サイッテー」 ……うん。そうだね。君の言う通り。俺は最低の馬鹿者だよね。 イった直後の放心状態から回復すると、祥悟はむくっと身を起こし、キツい目をしてこちらを睨みつけた。 白い肌は紅潮し、目には生理的な涙を滲ませている。 のぼりつめた瞬間の祥悟の顔は、息を呑むほど可愛くてエロくて綺麗だった。 でも……我慢出来ずに求めてしまった甘美なご褒美の代償は、とてつもなく大きい。 祥悟の了承も得ずに、ほとんど強引に口でイかせてしまったのだ。煌めくあの瞳に滲んでいるのは、もしかしたら悔し涙か、怒りの涙か。 ……いや。怒るだけじゃすまないかも。軽蔑されるか、嫌われるか。ひょっとしたら……もう絶交されるかも……。 この無邪気な天使は、好奇心いっぱいにこちらを煽りまくってくれたが、決してゲイじゃない。一時の興奮で、しでかしてしまった自分の過ちに、目の前が真っ暗になりそうだ。 「ごめん……祥……。すまなかった。本当に申し訳ない」 智也はシーツに手をつき、項垂れた。怒りに燃える祥悟の目が、怖くて見ていられない。 「なに、謝ってんのさ」 「……ごめん」 「だからー。何謝ってんのって言ってんの。おまえ、顔あげろよ。こっち見ろって」 苛立つ祥悟の声が、全身に突き刺さる。智也はいっそう身を縮こまらせた。 「嫌なことは、しないって約束したのに……すまなかった」 「…………」 祥悟が黙り込む。声がなくても、視線が突き刺さってくる。 どんなに詰られても、ただひたすら謝り続けるしかない。 口淫されたのは、きっと初めての経験のはずだ。 ゲイでもないのに、初めてのそれが、男からだったなんて……きっとものすごいトラウマだろう。 本当に……謝って済む問題じゃない。 ……ああ。本当にもう、どうしたらいいんだろう。ごめん。ごめんね、祥。 「なあ……顔、あげろって」
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