第3章.甘美な墓穴のその先に

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ベッドの上の布団の盛り上がりが、やがて規則正しい上下を繰り返すまで、智也はソファーに座って、雑誌を見ているフリをしていた。 あれ以上、祥悟に触れていたら、どうにもならないところまでいってしまっただろう。 自分の中から込み上げてくる激情を、上手くコントロール出来るほど、自分は大人じゃない。 この部屋に来てから、祥悟が惜しみなく自分に魅せてくれた、いろいろな姿を思い浮かべてみる。 キスの感触。 甘い吐息。 まだ少年っぽさの残る、でも恐ろしく綺麗な身体。 可愛い胸の尖り。 甘やかな喘ぎ。 感じてうっすらと染まる肌。 そして、青い花芯を口に含んだ時の、泣きたくなるような歓喜……。 ……可愛かったな……。ほんと、夢みたいだ。 両手を持ち上げ、自分の手のひらを見つめてみる。この手の中に、舞い降りてきてくれた愛おしいぬくもり。 大切にしてやりたいと、心の底から思う。こんなにも愛おしい存在と出逢えた自分は幸せだ。 君を愛していると伝えるのは、もっとずっと先でいい。 大人になった祥悟が、自分の気持ちを受け入れてくれる可能性があったら、その時でいい。 今はこうして密やかに想い続けるだけで、こんなにも心は満たされるのだから。 「祥……ありがとう」 智也はそっと呟いて微笑むと、立ち上がってベッドの方へ行った。拗ねたように壁の方を向いていた祥悟は、寝返りうったのか、いつのまにかこっちを向いて無邪気な寝顔を見せている。 ベッドをきしませないように、そっとそっと隣りに横たわった。 1人分以上の間を開けて、静かにただ愛しい天使の寝顔を見つめる。 初めて祥悟と一緒に過ごす夜は、信じられないくらい甘くて……そしてせつなかった。
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