第4章.君との距離感

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「はぁっ?だから知らないっつってんだろっ」 事務所のドアを開けた途端に、ものすごい声が飛んできた。 ……あの声は……祥? 智也はいったん入りかけた足を止め、廊下に出た。今の声は廊下の奥から聞こえてきたものだ。この階の突き当たりの部屋は社長室だった。 「待ちなさい。まだ話は終わってないぞ」 社長室のドアが開いている。そこから飛び出してきたのは……やはり祥悟だ。 ドアをバタンっと乱暴に閉めて、足音も荒くこちらにやって来る。 智也は廊下の真ん中に突っ立って、近づいてくる彼の姿を見つめた。 祥悟に会うのは久しぶりだ。そう、あのホテルでの日以来……もう1ヶ月近く経つ。 お互いに仕事が忙しく、顔を合わせる機会がなかった。 あの日は、近くの喫茶店でモーニングを食べて、送っていくという智也の言葉に、祥悟は首を竦め、タクシーで帰るからいいと言って、あっさり帰ってしまった。その姿を見送りながら、そういえば連絡先を交換するの忘れちゃったな……と、智也はぼんやり考えていた。 周りを蹴散らすような勢いで近づいてきた祥悟に、智也は内心ドキドキしながら声をかけた。 「久しぶりだね、祥」 その声に、初めてこちらの存在に気づいたのか、祥悟ははっとした顔をして立ち止まる。 「……おまえかよ」 不機嫌を貼り付け、鋭い眼差しで睨めつけてくる祥悟に、智也はにこっと笑って 「この後、予定はあるかな」 祥悟は一瞬、噛みつきそうな目をして何か言いかけたが、いったん口をつぐみ、ぷいっとそっぽを向いて 「別に?用事は終わってるし」 「じゃあ、ちょっと待っててくれるかい?事務所にこれ置いてくるから」 智也がそう言って手に持ったファイルをひらひらさせると、祥悟は横目でちろっとこっちを見て 「早くすれば?」 「うん。すぐ済むよ」 智也は頷いて、もう1度事務所のドアを開けた。
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