第1章 舞い降りた君

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マネージャーの飯倉を見送った後、智也はドアに再び内鍵をかけて、奥の衣装ルームに向かった。 祥悟が仕事場から抜け出す騒ぎには、何回か遭遇している。いつも大問題になる1歩手前で、ひょっこりと戻ってくるらしく、始末書ものの事態にはなっていないようだが、ベテランマネージャーの飯倉をかなり手こずらせているらしい。 姉の里沙が、事務所社長の養女だということもあって、社内でも祥悟のやんちゃには手を焼いている。こんな騒ぎばかり起こしていたら、いくら社長の縁者で事務所の稼ぎ頭だと言っても、周囲の反感を買うばかりだ。 この業界の人間は皆、お互いがライバルだ。周りは、隙あらば自分がその位置に取って代わろうと、虎視眈々と狙っている連中ばかりなのだ。 ……だからって、俺が余計なお節介してやる義理、ないんだけどな。 智也がため息をつきつつも、余計なお節介をしたくなるのは、祥悟の見てくれだけではない不思議な才能とオーラを、誰よりも間近で見せつけられた経験があるからだった。 それに……惚れた弱みも……あるのかもしれない。 ……さてと。どうお仕置きしてやろうかな。     
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