第4章.君との距離感

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しばらく黙々と歩いていたら、祥悟がふと思いついたように口を開いた。 「そこ、何食わせる店?」 「ん?ああ。フレンチ……かな」 「フレンチじゃさ、場違いじゃねえの? 俺、今日はこんな格好だけど?」 「大丈夫だよ。フランス料理って言っても、田舎の家庭料理らしいからね。そんなに気を張るようなお店じゃないらしい」 「……そっか」 地下鉄の階段を降りて、切符売り場で2人分買うと、祥悟に1枚差し出した。 「お腹、結構空いてるかい?」 「なんでさ」 「いや。そこね、料理もそこそこボリュームあるけど、デザートがかなり人気みたいだから」 渡された切符を見つめていた祥悟が、ひょいっと顔をあげる。 「……デザート?」 「うん。雑誌でたまたま見たんだけどね、君が好きそうなデザートがいろいろあったよ」 祥悟はまた目をぱちぱちとさせて 「俺、甘いもんは別腹。それにさ、今日は朝から何も食ってねーし」 そう呟く祥悟の表情が、かなり柔らかくなっていた。 恐らくは社長と何か揉めていたであろう彼のささくれ立った心が、少しでも和んでくれたのなら、頑張って誘った甲斐があったというものだ。 「そうか。それならよかった」 智也がほっとして笑いかけると、祥悟は何か言いたげに口を開いたが、結局何も言わずに、先に改札口に向かって歩いて行った。
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