第4章.君との距離感

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「ね、祥。そろそろデザートを頼むかい?」 タイミングを見計らって智也が声をかけると、祥悟は何故かむすっとした顔でこちらを見て 「あのさ、智也。こういう女が喜びそうな店の情報って、やっぱ下心あるから仕込んどくんだよな?」 祥悟の言葉に、咄嗟に反応出来ずに絶句してしまった。 ……いきなり……何言い出すの?この子。 返事をしない智也に、祥悟は苦笑しながら首を竦めて 「図星かよ。ま、わかってたけどさ」 ……え。いや、わかってたって何が? そもそもあまり機嫌がよくなさそうだと分かっていて、祥悟を誘ったのだ。つっけんどんな反応は覚悟していたけれど、食事をしているうちに、だいぶ和んできたと思っていた。 ……どうしてまた、そんな不機嫌?いや、下心っていうのは間違ってないけど。 智也は水をひと口飲んで気持ちを落ち着かせると 「下心っていうか。……うん、まあ、そうだね。雑誌見てて良さげなお店があったら、誰かと行く時用に覚えておいたりは、するかな」 「誰かと、ね。ふーん……。それってさ、例えば惟杏さん、とか?」 智也は瞬きをして 「あ。あー……まあ、そうだね」 「ふうん。ひょっとして、もうここ連れてきたわけ?」 「いや。ここに入ったのは今日が初めてだけど」 祥悟はきゅっと首を竦めて、フォークを皿の脇に置くと 「……デザート、頼む」 「え?ああ、うん。じゃあメニューを貰おうか」 智也は店員に合図をした。 店員が持ってきたデザート専用のメニューは、かなり分厚かった。 この店は、デザート専門のコーナーが独立した店舗になっていて、そちらは持ち帰り用のケーキや焼き菓子なども売っている。この場で食べられるのは、メニューの中から好きなケーキなどを選ぶと、シェフが美しく盛り付けてくれるデザートプレートだ。 メニューを広げて見ている祥悟を、智也はしばらく黙って見守っていた。 さっき一瞬ひやっとさせられた不機嫌そうな様子は、もうすっかり消えている。甘い物が並ぶメニューを、目を輝かせながら、1ページずつじっくり吟味している表情は、とても熱心であどけなくさえ見える。 ……気のせい……だったのかな。 会えない間、このつれない天使のことを考えてばかりいた。だから、傍にいられるのが嬉しくて、彼の言動がいちいち気になって仕方がないのだ。
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