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 倉沢梓は、スーパーのレジ係をしている。いつも、帰りは午後9時。仕事が終わり、外に出たら大雨が降っていた。 「やだ! 早く帰んなきゃ!」 帰り道の途中で赤い傘を持った女性と擦れ違う。そのまま歩いていると、人が倒れていた。よく見ると背中にナイフが突き刺さっていた。 「キャー」  梓は、2、3日スーパーをお休みした。第一発見者なので、警察署に呼ばれて事情を聞かれる。犯人じゃないのに疑われて、精神的に参っていた。  心配した梓の恋人、田村卓巳は、梓のアパートに訪ねてきた。 「梓、大丈夫か? 大変だったな!殺人事件に巻き込まれたんだって?」 「そうなのよ、ショックだったわ、若い女性だったみたい」 「世の中、物騒だからな、お前も気をつけろよ」  その1週間後、梓は通勤途中でマンションの下を歩いていたら、上から植え木鉢が落ちてきた。運良くずれていたので梓は、無事だったが、恐怖感でいっぱいだった。その時、女性の姿が見えたので、現場へ向かった。表札には『藤田』と書かれていた。チャイムを鳴らすと杖をついた中年女性が出てきた。 「あなたですか?植木鉢を落としたのは!危ないじゃないですか?」 「何のことですか?この足でそんなこと出来るわけないでしょう?変な言いがかりはやめてください」 女性はドアを閉めてしまった。  梓は、途方にくれ、卓巳に相談しようと彼のマンションに向かった。 「卓巳、今晩泊まっていい?」 「いいよ、入って」 玄関に入ろうとすると傘立ての赤い傘に目がいった。あの日の赤い傘と同じ模様だった。梓は、あの光景が甦ってきた。
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