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確かに、人間同士だって争っている。平和な日本ではあまりわからないが、世界各国では、未だに民族同士の紛争が絶えないところだって多くあるのだ。
同じ種族だって争うのに、違う種族が争わずに手を取り合うのはきっと、すごく難しいことなのだろう。
永遠に分かり合えないかもしれない。
そう思うと、柚貴は胸が小さく疼くのを感じた。
「そうか、残念だ」
つい声が暗くなってしまった。
心配そうに見詰めてくる時雨、聖、武人の視線に気付き、柚貴は無理に明るい顔をつくった。
「それにしても時雨、よく俺の考えていることが解ったな。手品みたいだな」
「まあね。俺様は読心術が得意でね。それにね、柚貴は顔に思っていることがちゃあんと顔に書いてあるから、すっごくわかりやすいよ。素直なんだね。ババ抜きとか苦手でしょ?」
「……時雨、それって、誉めているのか?それとも単純馬鹿だとでも言いたいのか?」
「めっそうもない。誉めてんに決まってんでしょ」
真面目な顔をしていたかと思えば、またふざけたような笑みを浮かべて時雨は笑った。
励まされていると思うのは、自意識過剰なのだろうか。
柚貴は確かめるように時雨を見る。しかし、飄々とした彼の顔からは何も読みとれなかった。
時雨は柚貴の肩に置いていた手をのけて、頭の後ろで組むと、ゆっくりとした足取りで歩き出した。
「この森に長居は無用だよ。さっきも言ったけど、一ヶ所に留まるのは危険だからね。さあさあ、鬼灯村を巡るツアーに繰り出そうじゃないの」
からりとした時雨の声にひっぱられるように、柚貴たちも明るい声を上げる。
「そうだな。それじゃあ、案内よろしく頼む、時雨」
「とびっきりエキサイティングなところに案内しろよ、時雨。オレは観光にはちょいとばかし口煩いぜ」
「はははっ、まあ任せといてよ。俺様は物知りだからね。鬼灯村でも選りすぐりの場所を案内したげるよ」
「楽しみだねぇ~」
四人は森を抜けて、村の方へと歩き出した。
その足取りは、逃亡者と逃亡幇助者とはとても思えない軽快さだった。
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