第二章 鬼灯村の秘密

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 人間と妖怪。種族が違うから相容れないのは仕方がないのかもしれない。 そもそも、柚貴だって妖怪が実在していると知って驚いている状態だ。 妖怪は同じ日本に暮らしながら、人間を避けて生きている。 そんなくらいだから、妖怪が人間に嫌悪感を抱いていても、しょうがないのかもしれない。 だけど、人間とほとんど変わらないように感じたり、考えたりする時雨のような妖怪がいると知った今は、互いのことをよく知りもしないうちから嫌われているのは、少し悲しいことだと思った。 いや、自分だってホラー映画のつくりものの世界とはいえ、幽霊を見たら嫌だとか怖いだとか思っていたのだから、おあいこかもしれない。 柚貴は妖怪や幽霊は人に危害を加えるものだという勝手な先入観を抱いていた。 だから嫌悪や恐怖などのマイナスの感情をもっていたけれど、今は違う。 時雨と一緒にいても、耳や尻尾に驚きはしたけど恐怖も嫌悪もぜんぜんない。 相手をよく知らないから、妖怪だという先入観でマイナスのイメージを持ってしまうのかもしれない。 もしそうだとしたら、相手に知ってもらうことで仲良くなれないだろうか。 自分たちがどんな性格か、何が好きで何が嫌いかなど、その人となりを銀蔵が知ったら、もしかすると仲良くできるかもしれない。 そんなことを考えていたら、ポンと肩に手を置かれた。 柚貴が振り返ると、時雨の顔がすぐ近くにあった。 時雨は無言でゆっくりと首を横に振る。彼の顔には、笑っているのか悲しんでいるのか解らない、なんとも複雑な表情を浮かべてられていた。 「それは無理だよ、柚貴。そう単純なことじゃないんだ。アンタみたいにそういうふうに相手を受け入れられる心を持ち合わせている奴は、人間にも妖怪にも少ないんだ。銀蔵と仲良くなうなんて、ぜったい考えない方がいい」 完全否定だった。 それほどまでに、違う種族の者同士が分かり合うのは難しいことなのだろうか。
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