moonbow

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 熟慮の末、俺は川崎への気持ちを、胸の奥へ封印することにした。彼女はクラスに一人いればラッキーな、神様があれもこれもと与えた結果の存在。そんな圧倒的な存在と、偶然にも俺は自らの運命線を交わらせることができただけで、今はまだ平行に進んでいても、この先も同じ道を辿ることは、きっとない。そう言い聞かせることにしたのだった。  川崎と委員会に出るのが三回目を数えた頃になると、学校全体で、七月上旬の学校祭に向けた準備が進みはじめた。出店、仮装パレードの山車作成、展示作品…など、ホームルームの時間に決めた各々の班に散らばって、放課後に作業を進める毎日が始まった。学級委員だったら「全体統括」とかそういう椅子にふんぞり返ってるだけで勝手にコトが進む役割を与えてくれたってよさそうなものだが、学校祭においては単なる一兵卒と同じ扱いを受けた。名ばかり管理職、ってこういうことを指してるんじゃないだろうか…とも思ったが、考えないことにした。  山車係には手先の器用なやつ、パフォーマンス係にはクラスのムードメーカー…みたいに、まさしく適材適所というべき人材配置が自然と進んだ。流れ流れて、俺は展示係のチーフを仰せつかったわけだが、目立つのが嫌いで、コツコツと地道に何かをやるのが好きな俺にはちょうどいいと思った。ただ一つだけ「おや?」と思ったことがあるとするならば、展示係の他のメンバーの中には、例によって、川崎もいたということである。
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