moonbow

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 そしてたいていそういう役割は男女で持たされるし、相方になる女子も女子で、ハンバーグ弁当で言えばハンバーグの下敷きになっているスパゲティくらい存在感のない女子が同じようにして選ばれて、各クラスのそうやって集められた面々が居心地悪そうに集まる、放課後の生徒会室が出来上がるわけである。  事実、一年生は前期も後期もそんな感じだった。意見という名の好き勝手をああでもないこうでもないとこねくり回すクラスの面々は、ここが「八つ墓村」の世界でなかったことを神に感謝してほしい。あの作品では、主人公のオヤジがかつて村人を皆殺しにした…という話があったが、その数はだいたいこのクラスの人数と同じ三十二人なのだ。そして副委員長という立場を存分に活かして、決まったことを黒板に書く以外の作業をすべて俺に丸投げしてきた女子のことは、俺はもうほとんど覚えていない。今はもう違うクラスになったから、尚更だ。  しかしながら、二年生に上がった今年は、俺が例によって、偽りの満場一致で委員長に担ぎ上げられたこと以降が、前年と違った。内心では地面が割れるほどの溜息をつきながら、教壇の前に立ち、それじゃあ副委員長は…と俺が言葉を発したのとほぼ同時に、ひとまとめにされた女子の席が並ぶ一角から、すっ、と挙げられた手があったのだ。  それが、川崎愛莉だったのである。俺はかなり意表を突かれたし、それは俺以外のクラスの面々も同じだったはずだ。俺が人の容姿に関してどうこう言う筋合いなどないのは百も承知だが、川崎は弁当の中で他の具材の下敷きになるような存在ではなかった。とはいえ、レンジで温めたら妙にぬるくなってまずいポテトサラダでもない。白飯も確かに重要な要素だが、単体での魅力と言うか、華がない。
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