moonbow

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 川崎って出店とか衣裳係とかをやるのかと思った…と言った俺に、川崎は「だって、出店って外で店番でしょ? やだもん、日焼けするの」と、平然と言ってのけた。普段の川崎は、降り積もったばかりの雪みたいに白い肌をしているけれど、真夏の太陽の下で小麦色の肌をした川崎の姿も、なんとなく見てみたい気もした。ただ、展示作品を作る過程ではどうしてもカッターナイフを使わなければならず、その刃が自らの皮膚を切り裂く感覚を味わいたくなかった俺は、下手なことを言わずに、黙った。  図書室で工作に関係する本を読んで、半分に折って色を塗った割り箸を使ったアートを展示作品とすることにした俺たちは、そこから早速作業をスタートさせたが、物事はそうそう頭の中で考えた通りには進まなかった。調子に乗って、作品の大きさを、校舎の二階から吊り下げられるくらいのでかい大きさにしてしまったので、いくら地道な作業が云々である俺を以てしても、ちっとも進んだ気がしなかった。かつ、部活動は通常通りに行われるせいで、帰宅部の俺は別として、全員が学校祭の作業にいつまでも専念できるわけではなかった。  教室の端でいくつかの机をくっつけて、畳一枚分ほどの断熱材に、ひたすら割り箸を突き刺す作業。これがまだ気の遠くなるほどたくさん残っていた。刑務所の労役でももう少しやりがいのある仕事をしているのではないか…と思ったこともあったが、そうは思いながらも俺がその作業に取り組み続けることができたのは、俺が決して独りぼっちだったわけではなかったからだ。
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