とある家族の最大の嘘

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おじいちゃんとおばあちゃんは、孫の私が見ても照れるくらい、仲がよかった。 おじいちゃんが庭で育てたお花を、おばあちゃんがきれいに生けて、いつも玄関に飾ってた。手を繋いで散歩するのが日課だった。 お互いに大好きなのが見ていてわかる、絵に描いたような幸せな老夫婦だった。 去年、おばあちゃんが倒れるまでは。 突然台所で倒れて救急車で運ばれて、そのまま入院することになった。 おばあちゃんがいなくなって、おじいちゃんは・・・あっという間に、認知症になった。 いつも季節ごとにきれいに咲いていた庭の花が、しおれて、荒れていった。 会うたびにおじいちゃんは変わっていった。ボンヤリして、今では私やママのことも、わかる時とわからない時がある。 庭の花は、すっかり枯れてしまった。 おじいちゃんは施設に入ることになった。 おばあちゃんのお見舞いに連れていった。 私達が行った時、おばあちゃんは薬の影響とかで眠っていた。 せめて手を握ってあげてとおじいちゃんの背中を押す。 だけど、 「知らない女の人の手を握るなんて」 おじいちゃんは首を振った。 「何言ってるの!おばあちゃんだよ!毎日手を繋いで散歩してた、ミヨさんだよ!」 「ミヨさん・・・誰、ですか」 「嘘でしょ?!おじいちゃん!」 泣きながらおじいちゃんの肩を掴んだ私を、ママが引き離す。ママも涙目だった。 おじいちゃんはその日からますます口数が減り、どんどんいろんなことがわからなくなっていった。 そして施設で暮らし始めた。
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