蘭と小鈴

2/4
前へ
/31ページ
次へ
二階の窓の戸を開けて、坂野小鈴(さかのこすず)は星空を見上げた。 ……シリウスにリゲル……ベテルギウスにこいぬ座プロキ オン……あっ、エリダヌス! それに、ベガにアルタイル…… 「ベガとアルタイルは、夏の星だよ。今は見えないの」 姉の(らん)は、笑いながら言った。 「でも、昼には見えるんでしょ」 「太陽の光が強すぎて、周りの星が見えなくなっちゃうの」 「不思議だなあ」 小鈴は白いため息をついた。 「もう、寒いから閉めなさい」 母の声が聞こえて、「小鈴、もう閉めるよ」と、蘭が窓の戸を閉めたが、小鈴はずっと、閉められた戸を見つめたままだった。 姉の手の感触に気が付いた小鈴は、そのまま一緒の寝床へ入った。 先天性緑内障。 小鈴は、生まれつき目が全く見えない。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加