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二階の窓の戸を開けて、坂野小鈴は星空を見上げた。
……シリウスにリゲル……ベテルギウスにこいぬ座プロキ
オン……あっ、エリダヌス!
それに、ベガにアルタイル……
「ベガとアルタイルは、夏の星だよ。今は見えないの」
姉の蘭は、笑いながら言った。
「でも、昼には見えるんでしょ」
「太陽の光が強すぎて、周りの星が見えなくなっちゃうの」
「不思議だなあ」
小鈴は白いため息をついた。
「もう、寒いから閉めなさい」
母の声が聞こえて、「小鈴、もう閉めるよ」と、蘭が窓の戸を閉めたが、小鈴はずっと、閉められた戸を見つめたままだった。
姉の手の感触に気が付いた小鈴は、そのまま一緒の寝床へ入った。
先天性緑内障。
小鈴は、生まれつき目が全く見えない。
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