中学生は物事をちゃんと考えない

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 いうまでもなくそれは白神で、反射的に自重を支えた腕は白い卵型の顔の横に突かれている。  顔が近い。  悪乗りの延長にあるはずが、俄かに色めき立つ。  合わせられていた白神の胸元が暴れたせいで弛んでる。酒に充血した目が至近距離から見上げる。  目じりの笑い皺も、はっきりと、本数まで数えられる。  唇に、自分のものではない息が、かかる。  ガキのように心音が高まるのは、飲み過ぎたせいなのか。  好きだった。  そう、白神は言った。  あのバカな俺のどこが好きだったかなんて、皆目見当がつかない。  白神の目の奥が、オレンジだ。  眸に反射した照明が、あの日の夕焼けを思い出させる。  問われたのを、思い出した。  あの時、白神は問うたのだ。俺に。  男が好きなのかと問うた、俺に。  問いを返したのだ。  「すいません、そろそろお布団の用意をさせていただいてよろしいですか」  襖の向こうから仲居の声がした。  いたたまれず、体をひきはがす。  「お願いします。」  か細い声は俺の下から這い出して、元の席に戻る。  冷酒を諦めた白神はコップの中の水を飲む。  あの時の言葉を、俺はどう返したっけ。  そして、俺を好きだったという白神はどんな反応をしたんだっけ。  浴衣の裾を繕って、白神の対面に座り直した。
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