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夜
残って勉強した帰り道。未だ降る雨の中、傘をさしトボトボと歩き慣れた道を往く。
街灯がコンクリートを照らし、コンクリートに張り付いた雨が反射できらきら光る。見る角度が違うと異なって見えるのはもちろん、雨によって常に更新され続けている。
騒がしい雨の音。近くの国道を走る車のエンジン音。水たまりのはねる音。人の声。自分の足音。全てが傘の中で反響して聞こえる。
車の後ろの上のライトが光って、連なっていく。その横の歩道に信号待ちをしている親子が見える。私もその後に並んだ。
……ふと思い出す。今日昼、放送室で。
――君は放送している時が1番きらきらしてる――
彼の声を思い出し終わらない頃、私はカバンと傘を下に落とし走り出していた。ごめんなさい、きっとこの後私はきらきらしてないわ。
青で渡り始めていた子供の腕を引く。私は止まらない。その母親が叫んでいる。
……私が最後に見たのは、視界の縦半分を占める黒いコンクリート、赤黒い液体が雨によって薄められながらコンクリートをそって落ちていく。
それが街灯とヘッドライトに照らされていた。
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