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第三章 大人になって鬼役から解放、でも追われる身に・・・
築二十年の木造アパート。そこで、優子は人目を避けるように暮らしていた。
「おい。誰もいないのかい。今日こそは返してもらうからな」
それからしばらくして、玄関の扉が「バタン」と大きな音をたてた。
「とうとうここも見つかってしまったわね」
優子は、洋服ダンスの中で息をひそめていた。
思えば、あれはOLになって、四年目のことだった。
「ねえ、優子。あたしね、最近、個人輸入を始めたのよ。それでね、お洋服なんか注文するんだけど、これがなかなか安くて、いい品物なのよ。あたしね、これで商売したらどうかと思うのよ。あなたも一緒にやらない。
大丈夫だって、あたしの彼、商社マンだし、いざとなれば彼がなんとかしてくれるって」結局、彼女の口車に乗ったあたしが、馬鹿を見るはめになった。半年も立たないうちに経営は破綻し、彼女は姿をくらました。多額の借金だけを残して。
「なんか、腹減ってきたな。なんかないのかこの家は」
そう言うと、借金取りは重い腰をあげた。優子は緊張のあまり、心臓が張り裂けそうだった。
「もっと、冷静になれ」
自分で自分にそう言い聞かせ、なんとか冷静さを保っていた。
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