1章 完

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『〇〇町の何丁目で惨殺死体が発見されました。証言によるといずれも 切り刻まれ___』ブツッ 最近、隣町で連続殺人が多発していた。 数十キロと離れていない所で何人もの人が死んだ。サイレンの音。緊張感を含んだアナウンサーの声。しかも隣町だ。もしその凶悪犯が近くを歩いていても気付かないだろう。…恐ろしい。しかし、毎日毎日そうでは気が滅入ってしまう…。 そうだ、最近できた近所のラーメン屋にでも行ってみよう。行った人の話では「どれも出汁が出ていて他のラーメンとは比べられない」と聞いていた。そう聞いて行きたくなる私もミーハーなのだ。 「いただきます。」 とても美味だ。評判になるのも頷ける。 「おいしいかい?」目を細めて微笑む人の良さそうな店主がそこにいた。 「とてもおいしいです!今まで食べたことのない味で…」 フフ、と含み笑いをこぼした。 「個体ごとにクセが違うからね」 「…?」鳥や豚のことかな。苦労したのだろう。美味であることのあまりの驚きと喜びで頬が緩んでしまう。 「…失礼だけど、お宅はどちらだい?」 ここから1キロも離れていない。歩けば5分くらいで着いてしまう、本当の近所だ。 「そうかぃ。なら、折り入って頼みたいことがあるんだけど___」 その後は比較的店が空いていたため、少し話し込むと店主と私はあっという間に意気投合した。なんと今日は店主が私の家に来るらしい。次の商品の試食を頼みたいとのことだったので、二つ返事で引き受けたのだ。 ピン…ポーン 「いらっしゃい!」 …暑そうだな。店主は黒の手袋にエプロン姿だった。もしかして今まで仕事があったのだろうか。そんな中来てくれるとは頭が下がる思いだ。 「こちらにどうぞ?………あの、その手袋、あつくないですか?家の中ですし…」 「あぁ、これかい?いいんだ、 これから使うから。」 『昨夜未明_〇〇町にオープンしたラーメン店が撤去されました。逮捕された店の主人は「人間で出汁をとってみたかった」などと述べており、店の裏や床下などに多数の人骨が発見され___』ブツッ
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