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僕は目を見開く。
「そんな……それじゃあ……」
「そう、それが私。貴方は星の光の残滓から生まれた。私は星の欠片のチリから生まれた。……『地球』風に言うなら、幼馴染、ってところかしら?」
そう言った彼女は、悪戯っぽい微笑みを浮かべて……でも、愛おしそうな眼差しで僕を見つめていた。
……そう、『地球』にいた頃と変わらない眼差しで。
「貴方にずっと会いたかったわ。なのに、貴方は『地球』に行ってしまって……。だから、私は追いかけたのよ。そして貴方の側で貴方が帰ってくるのをずっと待っていた」
――窓から突然、彼女がひょっこりと顔を覗かせた日の事を思いだす。
――『ねぇ、私、貴方の事を待っていたのよ。なのに貴方は何時までたっても戻ってこないのだもの。じれったくなって、迎えに来ちゃったわ』
――あれは……。てっきり誰かと人違いをしているのかと思った。……そう、たとえば、僕が姿を借りた『誰か』と勘違いをしているのかと思った。
――でも、あまりにも意味君の笑顔が眩しかったから……僕は彼女ともっとおしゃべりをしていたくて、嘘をついたんだ。
――『ごめんね、ちょっと体調を崩してしまって。……ねぇ、良かったらそこの窓の外にベンチがあるから、そこに座って僕とおしゃべりをしない?』
そうして始まった僕達の不思議な不思議な逢瀬。
でも、あれは彼女の勘違いなんかじゃなくて……。
「君は、僕に会いに来てくれた……んだ」
僕の呟きに、彼女は小さく頷く。そして、そっと顔を寄せると、コツンと僕の額に額をあわせた。
間近から覗きこむ、星の輝きを散りばめたような彼女の瞳。
「やっと、貴方は戻ってきてくれた」
「ごめん、こんなにも待たせてしまって」
僕の言葉に彼女はゆっくりと首を振る。そして、少し身体を起こすと、今度はそっと僕に身を寄せる。肩にコトンとその小さな頭を凭れ掛けさせた。
彼女の柔らかな髪が、僕の鼻先をくすぐる。それは懐かしい彼女の香り。
「貴方が帰ってきてくれたから、それで許してあげる」
「ありがとう。……その代わり、これからはずっと君の側にいるよ」
僕の言葉に、彼女は嬉しそうに小さく頷いた。……彼女の体は微かに、まるで恒星のように光っていた。
「何時か又、二人で日向ぼっこをしながらおしゃべりがしたいね」
「きっと出来るわ。私の光が『地球』に届くようになる頃に、ね」
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