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柔らかな感触が僕の髪を撫でていた。
クスクスと、微かに笑う声が聞こえていた。
――君は、誰?
『私は私。貴方だってよく知っている筈よ?』
――どうして僕の頭を撫でているの?
『撫でたいから。貴方の髪、柔らかくてとても気持ちがいいわ』
――僕、どしたの?
『寝ぼけているみたいね。でも、やっと、目が覚めた……』
――寝ぼけて……?
『ええそう。ほら、早く目をあけて御覧なさい。全ては貴方の目の前に広がっているから』
その言葉に誘われるように、僕はゆっくりとまぶたをひらいた。
目の前、遥か遠くに広がるのは、星がまたたく快晴の夜空が広がっていた。
見るとはなしにその夜空を見上げる僕の視界に、ふと何かが割り込む。
その何かは、愛おしい彼女の顔をして、幸せそうな微笑みを浮かべていた。
「どう……して……?」
僕に明日は無い……無かったはずだ。
だから、もう二度と君には会えない筈なのに。
「どうして、君がいるの……?」
僕の問いかけに、彼女はクスッと笑った。
「貴方が星に帰ってきたからよ」
「帰って……?」
「そう。……貴方は数億年前に放たれた、星の光と共に『地球』に降り立った。そしてそのまま『地球』で『人』として過ごしていた」
彼女説明は、僕自身の事なのに。僕はそれを、まるで夢物語を聞くような気持ちでぼんやりと聞いていた。
「でも、『地球』に光を届けていた恒星は、本当はもう数億年前に超新星爆発を起こして消滅していた……放たれた光を……『貴方』を残して、ね」
――そう、だ。彼女の言うとおりだ。僕は『人』ではなく、いや『人』どころか実態すらもたない、唯の光。星の残滓。だから、星が消えた後、僕はその運命に従って消える筈だったのに。
戸惑う僕に、彼女は優しく微笑む。
「貴方が知らない話を一つしてあげる。……『地球』から遥彼方の宇宙で構成が一つ、超新星爆発を起こして消滅をした後の事よ。貴方が光の残滓と共に『地球』に向かった後、星のあった場所に漂っていたチリが時間をかけて小さな核を中心に集まり始めたの。その塊は少しずつ少しずつ回りのチリやガスを取り込み、そしてやがて最初の小さなチリを中心に核融合を起こして、新しい星が生まれた……」
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