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二人の背後からは、森に火を放った連中が追ってきている。連中が握るレイピア――猛毒が濡れた切っ先が、炎を浴びてオレンジ色に瞬いている。
あのレイピアに貫かれ、毒が回り、父も弟も悶え苦しみながら死んでいった。捕まれば二人も同じ道を辿るだろう。
「そんなこと、できるわけがないじゃない!」
迫ってくる死への恐怖を振り払うように、娘は腹の底から怒鳴った。母の手を強く握り、目を見て告げる。
「一緒に逃げ切るのよ!」
「リリアーヌ……」
母は顔を曇らせ、首を左右に振った。
「賢いあなたなら、わかるでしょう? お母さんはもうこれ以上まともに飛べないわ。すぐにあいつらに捕まってしまう。だからあなただけでも逃げるのよ」
「飛べないのなら私が背負ってあげるから、だから、諦めないで!」
「リリアーヌ」
駄々をこねる幼い子供を嗜めるような強い声音で娘の名を呼ぶ。そこには普段の、昼寝が趣味のおっとりした面影は微塵もない。
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