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「なんだよ、云いたいことあるんなら遠慮すんなっつっただろ」
実那都は藍岬の家から航へと目を移した。航の口もとはへの字になっていて、気に喰わないといった雰囲気があからさまだ。
実那都はおどけたようにちょっと肩をすくめ、首をかしげた。
「航ってお坊ちゃんなんだって思って。学校にいるときはそんなふうに見えないけど、心配することがなくて、だから自信満々でやっていけてるのかなあって」
航は、ハハッと笑う。
行くぞ、と、自転車を押して雪の積もる歩道を歩き始めた。
実那都を送ったあと、この雪のなか、自転車に乗って帰るという。
かすかにサクッと音を立てながら実那都も歩きだす。
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