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「あ!」
実那都の驚きは声になってしまった。
ハッとして口もとを手で覆いつつ、彼が振り返りかけているのがわかった。
どうしよう。
独りきりだから、友だちと話しているふりもできない。
どうやっても逃れられないのに、実那都は亀のように首をすくめた。
刹那。
「祐真、これ!」
と、いきなり斜め後ろから太い声がして、実那都はびくっと肩を揺らした。
だれかと確認するまでもなく、声を聞けばわかるという藍岬航だ。
この久築中学で、粗暴な言葉遣いや振る舞いをする男子としていちばんに思いつくのは航だろう。
声が大きすぎるせいでそう感じるのかもしれない。
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