1.イノセンス

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実那都は突発的な出来事から目を離せず、息をひそめて、おののきながらふたりの応酬を聞いていた。 いま、放課後の教室には実那都と航と、そして他人の席を自分の場所のように居座っている祐真しかいない。 学年一目立つ三人のうちの二人というのが、このふたりだ。 当然ながら顔も名前も判別はつくけれど、新しいクラスになって間もないし、三年生になるまでふたりとは接点はなかったし、実那都はまともに話したこともない。 気づかれないようにと密かに念じていたにもかかわらず、航の顔が実那都のいるほうへとめぐってくる。 読書に(ふけ)っていればよかったと後悔しながら、実那都は息を呑んだ。
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