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「涼子。お前は必要のない存在なんかじゃない。俺には涼子が必要だ」
涼子は黙って涙でぬれた目で俺を見上げた。黒い瞳の中に俺の真剣な顔が映りこんでいた。
「俺は涼子が必要だ。涼子が彼女でなきゃ嫌だ」
涼子はしゃっくりをあげながら途切れ途切れに聞いた。
「こんな……こんな、私でも?」
「こんな涼子でもだよ」
俺ははっきりと断言した。
「どんな涼子でも、涼子は涼子だ。俺は涼子が必要なんだ。だから……」
生きてくれ、と言いかけて俺は口をつぐんだ。
その言葉は口にするにはあまりに重く、生々しいものだった。
涼子はしばらくの間、俺の腕の中で黙っていた。
そして顔をあげてまだ涙の残る目で力なく微笑んだ。
「ありがとう。トモ君」
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