彼女

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 電話は涼子の母からだった。  耳に飛び込んできたその緊迫した声に俺は凍りついた。そして我をも忘れて家を飛び出した。  頼む。間違いであってくれ。走る間、そればかりが心を駆け巡った。  俺が着いたとき、駅のホームにはたくさんの人だかりができていた。ホームには電車が止まっていてその電車の前にブルーシートが張られていた。 「いやあね。飛び込みですって」 「やめて欲しいわよね。ほんと」  呆然と目の前の光景を眺めていた。  周りの声は靄がかかったように遠く聞こえる。俺はゆっくりとブルーシートに近づいた。 ――涼子。君はまた、線路を歩いてみたくなったんだな。  俺は自分の首にかかっているRのネックレスをぎゅっと握り締めた。  涼子、君はこれで救われたのだろうか。やっと楽になれたのだろうか。  でも涼子、君は知っているだろうか。  この世に残された身には大切な人の死はあまりに辛く残酷であるということを。
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