いつか変わってしまうもの

2/7
前へ
/7ページ
次へ
 雨の日は、少しだけ早く家を出ることにしてる。   いつもより30分早くかけたアラームがなる。目が覚めると、カーテンの向こうから差し込む光はほとんどなくて、水の跳ねる音が聞こえていた。 眠気を吹っ飛ばすように、勢いよく身体を起こした。 急いで身支度を整えて、朝食を食べて。姿見でいつもより念入りに最後のチェックをしてから家を出る。 「いってきます!」  勢いよく扉をあけて、外に出た。 大きく深呼吸して、雨の匂いのする空気を身体に染みこませた。  パサリ。開いた傘を肩に置く。明るい黄緑色と濃い緑のストライプ模様は、先週お店で見た瞬間に一目ぼれしたもの。 傘に当たる雨の音に耳を傾けながら、私は弾んだ気持ちで歩きだした。  空は重たい灰色をしていて、そこから落ちてくる雨は針のように細く光って見える。  ときどき走り出したくなるのをおさえながら、途中までいつもの通学路を進んで、途中でくるりと方向転換。ひとつ前の角を右に曲がって、家の裏側と家の裏側に作られた細い道に入った。  肩を寄せ合えば人が二人、ぎりぎり進める幅で、傘を差していれば一人ずつしか通ることができないくらいしかない。  走り出したくなる気持ちをぐっとこらえて進んで行く。土や草、雨の強い匂いが香ってくる。垣根から青々とした葉がせり出して、ハイソックスを濡らした。  歩きやすい道じゃない。特にこんな日は、ちゃんと通学路を通った方が無駄に濡れずにすむ。 それでも、雨の日は必ず、この道を通ることに決めていた。  少しだけ傘を上げて、道の向こうを見通した。いつもより灰色っぽい、霞んだような世界、その中にワイシャツに黒いズボンという出で立ちの男の子を見つけた。  心臓がトクリと音を立てる。 「あ、いた……」  ポロッと口から言葉がこぼれた時には、私はその人に向かって駆けだしていた
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加