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「キリコ。俺、謝らないといけないことがある」
オガミの真剣な表情、醸し出す雰囲気を見て感じて、キリコはただ事ではない告白をするのだな、と瞬時に察知した。付き合い始めて3ヶ月。いつも楽しい雰囲気の彼が見せる、初めての表情だ。
「キリコ。付き合う時にお互い隠し事はなしでいこう。今の段階で隠し事はない?って聞いたよね。俺は何もないって答えたけど、ごめん。あれ嘘だ。実は俺・・・オオカミ男なんだ」
「えっ。嘘っ」キリコは思わず呟いた。
「いきなりこんな事言われてびっくりするよね?でも、事実なんだ。キリコとは、これからもずっと一緒にいたい大切な人だから本当の事を言いたくて」
「じゃあ、あの先祖代々の真ん丸いものアレルギーっていうのは・・・?」
「あれは嘘。本当は満月を見るとオオカミ男に変身しちゃうんだ」
「そうだったんだ」
「嘘ついてごめん」オガミは別れも覚悟した告白だった。そんなオガミに対してキリコは優しい口調でこたえた。
「本当の事を告白してくれてありがとう。オオカミ男であっても、オガミさん自身は変わりないんだから、私は全く問題ないです」
オガミは心からホッとし、この子を一生守ると心の中で誓った。
そして、この日の夜二人は初めて結ばれたのであった。 結ばれた後のベッドの中でオガミは言った。
「キリコ。お前の事をどんな事があっても一生守るからな」
「ありがとう。でも、あなたの一生はここで終わるから、それは今日までという事ね」
えっ?
オガミに激痛が走った。
なんだ?見ると鎌のようなもので背中を切りつけられていた。
「オガミさん。私も嘘をついていたの。実は私、カマキリ女なの。正直、こんな私が恋愛をしていいかずっと葛藤があった。でも、あなたの告白を聞いて安心した。恋愛は自由なんだって。あなたの事が好きで好きでたまらない。好きすぎて交尾をしたら食べたくて仕方なくなったわ」
「た、た、食べちゃいたいくらいあなたの事が好きって、以前言ってたけど、あれは冗談じゃなくて本音?」
「うん」快心の笑顔でこたえる。
オガミは薄れゆく意識の中で、カマキリの姿になったキリコに食べられていった。
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