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二宮が、クラスの女子三人に囲まれていた。加藤に宮古、安瀬。カンパを募った子達。
突き飛ばされて、後は鞄ででも殴られたか二宮は頭部を抑えて蹲っている。
「ちょっ、ヤバッ」
瞬時に逃げる選択をした加藤に続き、宮古と安瀬が走った。渡辺は追う真似はしないで蹲る二宮に近寄って行く。
恐ろしく慎重な足取りだった。
「……二宮、おい」
呼び掛ける声も小さく控え目で、基本乱暴な言葉遣いの渡辺とは思えぬ程に優しい。
「大丈夫か」
来栖にも見えた。二宮は蒼白な顔で歯を食い縛り、有り得ない程に震えている。その眼は大きく見開かれ、呼吸音さえ荒く性急なリズムで耳に届く。普段の彼女の落ち着きは欠片もなく、怯えた小動物に見えた。
「……大丈夫、渡辺君」
時間を掛けて、ゆっくり渡辺が隣にしゃがみ込む頃には落ち着きを取り戻したのか、硬く震える声で嘘臭い言葉が紡がれた。
「私は、大丈夫」
自身に言い聞かせる様に言葉を繋げ、すっくと立ち上がる姿をただ来栖は見ていた。
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