騙らぬコトノハ

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「人殺しの手助けしろって言うの」 落ち着いた口調で有りながら、放たれた言葉は舌鋒鋭い所では無かった。 秘め事を共有しようと囁き、助けを乞うた相手から向けられた容赦ない言葉の刃。 鋭利さに、そこに居た全員が凍り付いた様に動かなくなり表情を強張らせる。 血の気の引いた顔と、息をするのも(はばか)れる張り詰めた空気。 夏休み明け、長期休みの気だるさの残る教室内。 女子の一部が集まって、教室の片隅で仄暗い雰囲気を醸し出しながら深刻に密やかに話していたのも知っていた。 漏れ聞こえる言葉の断片から推測できた事は有るけれど、誰もが目を背ける様にして聞いていない振りを装い秘密の拡散を阻止していたのに。 そうするべきだと、一人の女生徒を救うのなら聞かなかった顔をしろと。 白痴な顔で、彼女達の要求を受け入れろと。 暗黙の内に決まっていた筈の答え。 それを。 切り捨てた。 捨てるべきものは何かを天秤に掛けた上での解を。 彼女達の苦悶と苦汁の決断を。
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