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彼氏か彼女か。
唇を戦慄かせながら、中心となっている女子の一人がもう一度囁く。
「どうして。同じ女の子なら大変さは分かるでしょ」
「早い時期じゃないとダメなんだし」
ほぼ失言に近い言葉を無視し、努めて淡々とした調子の言葉が二宮から繰り出される。
「それでも、これは人殺しの手伝いよね」
これと指差すのは小さな袋。
ピンクの布地に、大人から子供まで幅広い人気を集めるキャラクターが刺繍されている。
白々しくも中には「カンパ」の一言で募った五百円硬貨が詰まっていた。
一人の少女を学校から去らせない為に掻き集められた一つの命を奪う為の硬貨が。
ただ穏やかに紡がれる言葉には、返って何の感情も読み取れない。
故に、これ以上粘っても同意は得られないと分かる。
それに居心地が悪くなっていた。
舌鋒鋭く放たれた言葉に、クラスの誰もがお金を出す事は人殺しの手助けをするのだと強く意識させられ、居たたまれない表情を隠して目を背けている。
憎しみに彩られた声と、その感情を隠しもしないで表情に露にした一人が吐き捨てた。
「あの子が退学したらアンタの所為だから」
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